専門看護師

専門看護師とは

看護師のキャリアアップ資格の1つ「専門看護師」。1996年に発足した、日本看護協会認定の資格です。 複雑で解決困難な看護問題を持つ個人や家族などに対して、水準の高い看護ケアを効率よく提供することが目的であり、各専門看護分野の知識・技術を高めることによって、保健医療福祉の発展や、さらには看護学の向上にも貢献することを期待されています。

6つの役割

専門看護師は、専門看護分野において、以下の6つの役割を果たします。

  1. 実践(個人、家族及び集団に対して卓越した看護を実践する)
  2. 相談(看護職を含むケア提供者に対し、コンサルテーションを行う)
  3. 調整(必要なケアが円滑に行われるために、保健医療福祉に携わる人々の間のコーディネーションを行う)
  4. 倫理調整(個人、家族及び集団の権利を守るために、倫理的な問題や葛藤の解決をはかる)
  5. 教育(看護者に対しケアを向上させるため教育的役割を果たす)
  6. 研究(専門知識及び技術の向上並びに開発をはかるために実践の場における研究活動を行う)

14の専門看護分野

専門看護分野には、以下の14の分野があります。登録者数総数は全国で1000人を超えており(2014年1月現在)、今後変化する看護ニーズに合わせてさらに増えることが予想されます。

専門看護分野とは、変化する看護ニーズに対して、独立した専門分野として知識及び技術に広がりと深さがあると専門看護師制度委員会が認めたものをいいます。

2022年2月現在、特定されている分野は以下の14分野です。

分野名 英語表記 分野の特徴
がん看護 Cancer Nursing がん患者の身体的・精神的な苦痛を理解し、患者やその家族に対してQOL(生活の質)の視点に立った水準の高い看護を提供する。
精神看護 Psychiatric Mental Health Nursing 精神疾患患者に対して水準の高い看護を提供する。また、一般病院でも心のケアを行う「リエゾン精神看護」の役割を提供する。
地域看護 Community Health Nursing 産業保健、学校保健、保健行政、在宅ケアのいずれかの領域において水準の高い看護を提供し、地域の保健医療福祉の発展に貢献する。
老人看護 Gerontological Nursing 高齢者が入院・入所・利用する施設において、認知症や嚥下障害などをはじめとする複雑な健康問題を持つ高齢者のQOLを向上させるために水準の高い看護を提供する。
小児看護 Child Health Nursing 子どもたちが健やかに成長・発達していけるように療養生活を支援し、他の医療スタッフと連携して水準の高い看護を提供する。
母性看護 Women’s Health Nursing 女性と母子に対する専門看護を行う。主たる役割は、周産期母子援助、女性の健康への援助、地域母子保健援助に分けられる。
慢性疾患
看護
Chronic Care Nursing に関する水準の高い看護を行う。
急性・重症
患者看護
Critical Care Nursing 緊急度や重症度の高い患者に対して集中的な看護を提供し、患者本人とその家族の支援、医療スタッフ間の調整などを行い、最善の医療が提供されるよう支援する。
感染症看護 Infection Control Nursing 施設や地域における個人や集団の感染予防と発生時の適切な対策に従事するとともに感染症の患者に対して水準の高い看護を提供する。
家族支援 Family Health Nursing 患者の回復を促進するために家族を支援する。患者を含む家族本来のセルフケア機能を高め、主体的に問題解決できるよう身体的、精神的、社会的に支援し、水準の高い看護を提供する。
在宅看護 Home Care Nursing 在宅で療養する対象者及びその家族が、個々の生活の場で日常生活を送りながら在宅療養を続けることを支援する。また、在宅看護における新たなケアシステムの構築や既存のケアサービスの連携促進を図り、水準の高い看護を提供する。
遺伝看護 Genetics Nursing 対象者の遺伝的課題を見極め、診断・予防・治療に伴う意思決定支援とQOL向上を目指した生涯にわたる療養生活支援を行い、世代を超えて必要な医療・ケアを受けることができる体制の構築とゲノム医療の発展に貢献する。
災害看護 Disaster Nursing 災害の特性をふまえ、限られた人的・物的資源の中でメンタルヘルスを含む適切な看護を提供する。平時から多職種や行政等と連携・協働し、減災・防災体制の構築と災害看護の発展に貢献する。
放射線看護 Radiological Nursing 放射線がもたらす身体、心理社会的影響の特性をふまえ、放射線事故・災害における平時からの体制構築と健康課題を有する対象へ長期的な看護を提供する。また、放射線診療を受ける対象者とその家族へ水準の高い看護を提供するとともに、職業被ばく低減の方策等、施設における体制を構築する。

※公益財団法人日本看護協会 専門看護師

専門看護師になるには

専門看護師になるためには、看護系大学院の修士課程を修了(専門看護師教育課程の所定単位取得)かつ、5年以上の実務研修を経たうえで、日本看護協会が行う認定審査(書類審査及び筆記試験)を受け、合格する必要があります。さらに、看護師とは違い、取得後も5年後ごとにレベル保持のための更新審査を受けなけれなりません。

受験資格の取得
大学院修士課程修了+5年以上の実務経験
認定審査
書類審査
筆記試験
専門看護師認定証
交付・登録
5年ごとの
更新審査

受験資格

以下の3つを満たしていることが必要です。

  1. 日本国の看護師免許を有すること
  2. 大学院修士課程を修了し、日本看護系大学協議会専門看護師教育課程基準の所定の単位(総計26単位または38単位)を取得していること
  3. 実務研修が通算5年以上(うち専門看護分野の実務研修が3年間以上)あること)

専門看護師教育機関

専門看護分野の単位取得については、それぞれの看護分野の教育課程がある大学院で学びます。

専門看護師教育機関・課程一覧 (日本看護協会サイト)
奨学金など